庇護雑記

嘘たち

私的檸檬

 
教授が言ってた「人生はバランスシートではない」という言葉がすごく頭に残ってる。自分の辿って来た道を振り返る時にどの方角を見るかで全く違う結果になると。
 
夜中にベランダに出る。身を切るような寒さが生きてる実感を強引に押し付けてくる。でもここを乗り越えてしまえば一瞬でバラバラになっちゃう。人間は脆いからあっさり死ぬ。本当に、あっという間に死んじゃう。私のマンションよりも高い建物はずっとずっと向こうにしかないから遠くの方まで見渡せる。信号と街灯の光しか浮かんでない中にぽつんと窓から漏れる光が白や青、赤に変わってる家を見つける。
あっ、夜更かし。いけないんだー。私と一緒だね。
ねえ、この時間の冷え切った空気を感じているなんて背徳的だと思いませんか。草木も眠っている時間だと言うのに何をしているの。
「東京を吹っ飛ばすための小包を作っています。これで10個目になります。」
そっか。私はね、私は...
部屋の白い壁にアクリル絵の具をぶちまけたりしてる。トラックの前に飛び出して僕は死にませんとか言ってみてる。セーラー服を着てショットガンぶちかましてる。街をギター掻き鳴らしながら歌いながら走ってる。現金輸送車を乗っ取って奪った1億円の札束全部、東京タワーの展望台からばら撒いてる。
既存のもの全て壊しちゃおうよ。現実なんて超くだらないじゃん。いまあなたを縛り付けているものなんてね、取るに足らないものなんだよ。
 
なんてねうそぴょん。
 
奇妙な共犯意識が芽生えて孤独感が薄れていく。
人を生かすのも殺すのも人だ。事実私は人によって生かされているのを実感しているし、私が死ぬ時は人によって物理的にもしくは別の観点から殺された時だ。病死は別として。
 
人が生きていく上で一番必要なものってなんだろう、かれこれ3年以上真剣に考えてきたけどやっと最近分かってきた気がする。まだ仮説の段階だから結論とまでは言えないけど。
でもきっと間違ってないと思う。
自分の命に関して価値を見出すことは難しいし、だからといって付加できるような価値もない。どれだけ着飾ろうが中身が空虚ならば全く意味がない。だけど私の目だけは特殊で価値のあるものだと思えるようになってきた。私だけに見えている世界がある。少しだけ青みがかってるかもしれないけど、そこには私にしか気付けないものがたくさんある。私にしか切り取れない事実がたくさんある。それを教えてくれたのは友人だ。その瞬間、私を生かしたのは間違いなく彼女の一言だ。
 
私は心身共に構造が本当に複雑で、余計なところが精密すぎるからすぐにエラーが出る。だけどその代わり他人のエラーには人一倍敏感だ。残念ながら博愛主義ではないのでマザーテレサ的な「万人を救い、万人を愛します」なんてことは潔癖的偏愛の私は口が裂けても言えないけど、大切な人たちだけは救っていけるかもしれない。私にはもしかしたらそういう力があるかもしれない。その力を発揮できた時、私が生きている意味を見出せたり私の命に価値がついてくるのではないかと思った。やっぱり私は幸せに触れてみたいし、私のこの腕で誰かを深淵から引き上げてあげたい。
せっかく生まれたんだもん。せっかく、生きてるんだもん。



 
 
林檎昔から超可愛いよ。いじったいじった言われてるけどやってないと思う...ホクロ移動しただけだよ...