庇護雑記

嘘たち

たえる


やっぱり夢なんてみられない
叶ったためしがないから
期待をするなんて無駄だ
最後は裏切られるから

きえていく
私は取り残される
波打ち際から動けないのが私
足下の砂が波に掬われてバランスを崩すのが私


雨の降るなか傘を差して校庭を歩いてる
朝礼台まで雨に濡れた本を取りに行く
そこまでの道にかつての同級生2人が立ってる
2人とももうこの世にはいない
1人は私の憧れの対象でもあった友達
もう1人はクラスメイトだった男の子
その2人の前を私は通り過ぎてびしょ濡れの本を手にとってページをめくる
雨が強くなってくる
傘に当たる雨の音が大きくなっていく
振り返ると2人と目が合う
私はセーラー服のスカーフの結び目を握る
雨がさらに強くなっていく
雨音が私の声をかき消す


こんな夢を何度か見てる
なんでこんな夢を見るのかわからない
私の中で何らかの後悔があるのか
もしくは何らかの暗示なのかそれとも
ただ雨は冷たい。すごくすごく冷たい
でも2人の目はあたたかい
なんなんだろう、これ


もうこれ以上何も失いたくない
これ以上抉られたくない
傷つけるのも傷つけられるのも嫌
誰かが消える前に誰よりも先に消えたい
寂しいのはいや 哀しいのもいや

心に穴が空くという表現は正しい
身体の真ん中に穴があいて冷たい風が通り抜けていく
そんな感覚を私は10年以上前から感じてた
そしてその穴を埋められないまま
夢で差せたはずの傘も差せないまま
びしょ濡れになりながら冷たい地面に倒れて
指先からだんだん温度が失われていって
雨で涙が薄められて唇の色が奪われていって
ねむたくなっていく

私その時笑ってんのかな
最後に思うのは多分
指を掠めることも出来なかった希望への嘆き