庇護雑記

フィクションだから。

みぎがわ


腕を前で交差させて背中にまわしてみる
あと1cmだけ左右の中指がとどかない
たったの1cm
永遠に触れられないあと1cm

あんなに大好きだったバービー人形は押入れの深いところで手足を曲げられ金髪の綺麗にカールしてた髪はもう確実に解けないほどに固く絡まってた
子供の頃どこでも一緒に連れて行っていていつも抱きしめていたテディベアは何処かに置き忘れてきた。そのことに気付いてデパートで大泣きした古い記憶
あれは結局戻って来なかった

大好きだったはずのものも大切だったはずのものも気付いたら壊してる 気付いたら失くしてる

何かを愛する前に自分を愛せ
耳にタコができるほど聞いたよそれ
だけど中指が届かないから
永遠に触れられない1cmには1cm以上の数値化できないものが詰め込まれてるから
腕は長いはずなのに自分の身体も抱きしめられない
手を伸ばしたって掴めないもの、この世にはたくさんある
なのに身の周りにある簡単に触れるものにはアレルギー反応が出る


お祭りで綿あめを作る機械からふわふわ出てくる飴を見ているのが好きだった
私の身体に綿の飴を纏ってバリアを張りたいって思ってた
私の割り箸まで誰もたどり着けないくらいふわふわの甘い綿でくるんで盾を作ろうって

ねえあたし甘いかな、ふわふわかな
5cmくらいでやめておいた方がいいってもう一人の私が言ってる
手首まできたらだんだん苦くなってくる
私は甘くなんてなれない
何故なら私の中身に砂糖なんて1gも入ってないから


可愛い女の子の存在は尊い
雑誌や画面の中の女の子の甘ったるさは見ていて窒息しそうになる
玉城ティナちゃん可愛いな
白石麻衣ちゃん可愛いな
どうすれば誰にも咎められることなく、後ろ指をさされることもなくあんな顔に変えられるのか
事故を装って顔面からガラスに突っ込めばいいのかな
そうすれば私も甘い女の子になれるかな
自分のこと好きになれたりする?
キラキラしてふわふわして綿あめみたいな
私が好きだった普通のよりもちょっとだけ高いピンクの綿あめみたいな
そんな子になれるのかな

なんてなんてなんてね


あの香りの正体を知った時の絶望感
もう戻れないって五感に刻まれたみたいで
生を全うするということ、私にとってはとても残酷なことだった