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庇護雑記

フィクションだから。

meyllphy

 
 
冬の芝生があんなに刺々していること、今まで知らなかった。顔の右側に刺さった枯れた芝の痛みを感じて薄眼を開けたらばすぐに状況の深刻さを把握した。さすがにこれはまずいと思ったが大丈夫、も伝えられないほど身体も喉も全く動いてくれなかった。取り囲む女の子たちに靄がかかって声がすごく遠くに聞こえた
 
水色の人たちが来たのは2秒後くらいに感じた。眼振があると言われたのは覚えている。いつも思うがあの状態で生年月日を言わされるのはキツい。財布でも漁って保険証みてほしい。
全部が遠かったけど一番大事なことだけは言えた。
あの場所は視界を遮るものが何もないということを卒業目前にして知った。冬特有の薄青の空がアクリル絵の具の一色で塗りたくった作り物の空のように見えた。あの時私が見た空は平面のキャンバスの空だった。キラキラとラメが飛んでいた。
なにが見えますか
キラキラしてます、そらが
キラキラしてるのが、たくさんみえます
 
 
 
 
不安で死にそうだった。というか死んでしまいたいと思った。久しぶりに心底死にたいと思った。やっぱり向かないことをするべきではないなと思った。労るラインの通知が画面に光るたびに涙が止まらなかった。電車の中で壊れた水出し機能付きロボットみたいに表情一つ変えず目からボロボロとめどなく流れ続けてた。一刻も早く向かいの電車に乗り換えて帰りたかった。だけど帰るわけにはいかなかった。こんなのに何の意味がある、私が呼吸を続けたところで何になるんだ。永遠に傷を抉られ続けるだけなのになんのために、いい加減死んでしまいたい消えてしまいたいだれか、私を轢き殺してくれ
そこからブツッと切れた
 
 
 
知らない色んな人が優しかった。誰も殺してくれるわけがなく、逆に命を救われる罪悪感にまた苛まれる。優しいのは辛い。言わなきゃいけないことを言って、そっか、と言われて頭をなでられた。情けなくて辛かった。さっきまで死にたいしか頭になかった人間が万全の状態で救われる皮肉さ、惨めにもほどがある。あの状態でも顔を覚えている。当たり前だけど私を救いにきたわけだから過剰に優しい。あんな形でしか助けを求められない自分はどうしようもない。たすけてください、が言えなくて、でも身体は全力で助けを乞うのはギリギリの私を引き止めるための延命本能なのだろうか。
揺られる車内、付き添いの方が私の涙を拭った。握られた手が冷たかった
 
 
もうなにも内側に抱きたくない
こんなことになるなら、身体がついていけないのならもうなにもなくていい、私は空っぽじゃなければこの世で生きていくことなど不可能なのだ
そう思った
 
 
「悪いことじゃないんだよ、認めてね。」
分かってるよ、わかってるけど
でも私にはそんな権利すら、与えられてないみたいだからさ