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庇護雑記

フィクションだから。

早贄

 

 

飛べるようになったばかりのカラスが意気揚々と飛び回っている姿を見て片っ端からぶちのめしていくという悪い想像に取り憑かれながらノマドワーカーをしている。

次々と羽根を引き抜かれていくことなどつゆも考えていない奴らは、翼がボロボロのスカスカになっていつの間にか高いところを飛べなくなっていることに気付くのにどれほどの時間を要するのだろうか。

鷹になるものもいる。一定数いる。奴らは元はカラスだ。ずる賢くて盲目なカラスだ。率先して路上に転がるゴミ袋に嘴を突っ込み、集合住宅のベランダから針金ハンガーを盗む。スズメが地面をとびはねていれば濁った大きな鳴き声を発して蹴散らす。車に轢かれた猫を見つければ容赦なく腹をつついて腸を引きずり出す。そうして、立派に真っ黒なカラスになっていくのだ。そんなカラスがふとその姿を鏡に映すと、鋭い目つきの鷹として映っていることだろう。おめでとう、エリートの世界。

 

 

 

 

くだらない人生だ、と思わないのだろうか。

頭が良くて優しい人が潰れていく。じわじわと羽根をもがれて動けなくなっていく姿を私は陰から眺めている。私の翼は広がらない。

今、なんとなく思った。戦線で銃を携えて走り始めた仲間のことを、戦線に向かっていく仲間を何列も後から追いかけていた兵士は何を思っていたんだろう。

規模や種類は違えども、本質的にはほぼ同じだ。生きるってことは、たぶん血の流れない戦争だ。

 

 

艶々の黒い羽根を引き抜いてしまいたい衝動に駆られる。遠くの空めがけて羽ばたく姿を撃ち落としてみたい。同じ傷を、同じ痛みを、まだ何も知らない鳥たちに向けて。

 

 

私は、近づいてきたものは食べない。それら全てをお飾りにして本当に求めているものを自分で掴み取る。というか、もうそうするしかないのだ。無防備な生き物は片っ端から捕まえて美しく枝に突き刺してあげる。欲しいものが手に入るまで、適当に小腹を満たすなんてこと、私にはできなかった。

カラスにも鷹にもなれない百舌鳥として。