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庇護雑記

フィクションだから。

吐きたくなるほど愛されたい

 

 

フラワーカンパニーズの吐きたくなるほど愛されたいが、飛び降りの曲だと気付いたのはガラガラの快速電車に揺られている時だった。スカイダイビング、地面につくまであと何秒、涙なんて流せない、最後加速していくドラムとギターの旋律、なにより鈴木圭介の歌声に鳥肌が立った。公共の場で冷水をぶっかけられたような顔しちゃってスマホを握りしめてる私の向かいでは、ネクタイもメガネも歪んで体も半分傾いてるサラリーマンが夢の世界に旅立ってた。揺さぶって現実に戻して、今あなたは幸せですかと聞きたかった。幸せですか、あなた。てかあなたの幸せってなんですか?私のイヤホンから流れるこの曲を聴いてなにを思います?根性ねえな、とか痛えな、とかそんな感じですかね。それとも私と一緒に冷水ぶっかけられた顔します?心臓に近い心臓じゃないところを鷲掴みにされるような気持ちになったり、するんですかね。目の奥がツーンとしたり、するんですかね。

私があなたの後ろに流れる景色を見ている間、あなたは私の後ろに流れる景色を見ている。決して重ならない視覚情報みたいに、この曲が誰かの手にひっかかったり、あるいはすり抜けて流れて行ったりしながら、時間だけは平等に流れてる。あなたは直帰ですか、わたしは、これから旧友に会うんです。

 

 

旧友と食事に行った。久しぶりだった。

私の大嫌いな中学時代を知るこの旧友はとてもじゃないけど24時間では足りないくらいの活動をしていて、時間は平等なんて言ったけどそれは与えられたものであって何%を活用するかは全く別の話だと気付いた。しかし、倍速で生きているとしか思えない彼女の話を聞いているとだんだん自分が太陽に背を向けている人間のように思えて後ろめたい気分になった。あたし、なにしてんだろ。てかなにやりたいんだろ。ほんとにやりたいのかなこれ、才能あんのかな、とか。

中学時代の記憶の掘り返しは大嫌いだが、彼女が当時の秘密を零した。以下仮名。

「ミナとアリサってニコイチだったじゃん、でもアリサってミナのことすっげー嫌ってたんだよ。だからあのふたり、高校進学してから全く交流してないでしょ。縁切ったんだよ、アリサ。」

 

だいぶびっくりした。女って最低だと久々に思った。最低で汚くて愚かだ。私あの2人はほんとに仲良いと思ってた。ミナはアリサのこと本当に好きだったはずだ。でもアリサは違ったんだ。大っ嫌いだったんだ。また私は冷水ぶっかけられたみたいな顔してたと思う。そんなに大嫌いな相手に対してニコイチみたいな笑顔はできない。でもアリサはずっと笑ってた。何年も会っていないアリサの笑顔を思い出して寒気がした。

 

帰り道、安っぽいネオンに照らされた道を歩きながら旧友が言った言葉、それは真理であった気がするけど、私はそんなに器用に生きられない。だからこんがらがっちゃってる、なんて言えるわけもなく笑ってバイバイした。なに、笑ってんだよ私。器用に笑顔、作ってんじゃねえよ。情けなくて堪らなかった。涙なんて流せないくらいに。

 

私をはけ口とするLINEをスクショして友人に送るたび、一瞬思う。

嘘じゃない、嫌いなんかじゃない、でもただサンドバッグのように、首の動くマネキンのように、時にはダッチワイフのように、そんなふうに自分が扱われてるような気がして。別に誰でも良くて。話聞いてくれるなら誰でも良くての誰でもがたまたま私だっただけ、なんて考えると送信ボタンを押してしまうのだ。

私って最低だ。