読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

庇護雑記

フィクションだから。

記録

 

 

別に深い意味なんてなかったわ。

灰色の分厚い雲が脳内に垂れこめてくると急な雨に備えて傘を探したり、屋根のあるところまで走ってみたり、そんな感じで、誰だって雨をしのぐでしょう。ずぶ濡れになるなんて嫌じゃない。あなたもそうでしょう?

それと同じです。私は雨に打たれないように傘をさして建物の陰に隠れた。別になんでもよかった。誰でも良かったのよ。それで自分が風邪をひかなくて済むのなら。

アルコールで酩酊してずいぶんと楽しそうなあなたも結局私と似たようなものね。目的は現実逃避、目標はゼロ地点。なんにもないって分かっているけど走り続けるのは果たして本当に不幸なのかしら。希望を見据えて山道を走った挙句の崖よりは、よっぽどマシだと思うわ。もし惰性で生きていくことが出来るとするならば、それが一番の幸せ者ね。だけどそんな無味乾燥な幸せなんていらないわ。

自分を満たすためならどんな出費も犠牲も厭わない。飽きたらまた売りに投げればいいのだし、踏み潰された愛だってどうせ使い捨てなのだからまた新しいものを作ればいいわ。そうやって自分の中でサイクルを作るの。賢いと思わない?私はひとりで、欲しいものをなんだって手に入れてるのよ。

 

上からこうやって見下ろしてると、全てを手に入れている気分になるの。それと同時に全て失くした気分にもなるわ。手に入れるということは、失うというリスクも伴うのだから当然のことよね。失うということはどれほど怖いのかしら。どれほど憐れな目を向けられるのかしら。それはね、まず得てみないとわからないものなのよ。

 

私は別に失くしてなんかないわ。それなのに何故そんなに哀しそうな目で見るのかしら。私はきちんと傘をさしてるのに。私は綺麗に着飾って大好きなもので五感を覆い尽くしているというのに。幻想?そうね、幻想に浸って戻ってこれなくなってみたいものね。

 

 

朝よ。早起きね。