庇護雑記

嘘たち

マリア

 

わたしがアイドル沼に片足を突っ込んだとき優しく沼へ招き入れてくれたのは、その頃まだ名義を持っていなかったわたしをコンサートに連れて行ってくれたひとつ年上のお姉さんだった。

ネットで知り合ったその人はすごく真面目な人だった。反面なにかにつけて思いが真っ直ぐすぎるあまり、世の中と折り合いをつけることが苦手なようで、わたしはその一面を好意的に捉えた。同じ苦しみの中で生き、同じものを好きになって似たような痛みに耐えながら日々を過ごしていることに軽く運命的な縁すらも感じた。

その人に初めて好きになったアイドルは誰かと聞いたら、目をキラキラさせて渋谷すばるだと答えた。

 

何年も好きだった人を突然失うことの辛さを私はまだ知らない。渋谷くんが脱退すると知ったその人は、とても切ない言葉を残していなくなってしまった。その人にとってのアイドルは生き辛さを和らげてくれる存在だと言っていたけど、それがなくなった今なにがその代わりになれるんだろう。もう大人なのに遠い存在を好きになる人々は後ろ指をさされがちだけど、刺さった指など私たちの人生にはなんの関係もない。アイドルは、世の中の棘からその人を守るような存在にすらなるのに、それを取り上げてしまったらなにがその人をあらゆる棘から守ってくれるのだろうか。無関係の安全な場所から首を突っ込んで、個人の価値観を押しつけて一体何になるというのか。お前が真綿にでもなれるとでも思うのか、絶対になれない。

 

渋谷くんはなにか悪いことをしたわけではないし、また別の場所で姿を見ることができるかもしれないけど、某メンバーに至ってはそうもいかない。某メンバーを何年も何年も太陽にして生きてきた人の喪失感たるやはかり知れない。たとえ世界で一番好きな人であったとしても、さよならすらも伝えられないまま突然夜になるなんて

そんなのあんまりだ

 

 

 

ゆうさんが幸せでありますように