庇護雑記

嘘たち

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小学生か中学生の頃、働くおっさん劇場とかいうダウンタウンのまっちゃんがプロデュースしているだいぶシュールでぶっ飛んでる深夜番組が好きで、毎週かかさずみていたことを唐突に思い出した。あれを好きな子供ってなかなかに気色悪かったなと今になって思った。サブカル女の片鱗が表れていてつらみがある。

昔8チャンって面白いけどシュールな雰囲気のある番組が多かった気がする。その頃、よくテレビみてたんだよね、っていう回想をした。

 

こういう話が通じる人であったらいいな、と思いながら人と接している感じです。

 

 

仮想敵

 

狂っている奴にどうしても負けてしまう

私の人生を私が壊したなら仕方がないけど、名前もわからない赤の他人が轢き逃げみたいに私の人生に一瞬だけ突っ込んで、私の中に永遠に消えることのない傷を作るなんてことが許されるわけがないんだ

いつも理不尽を被る側が負ける、めぐりめぐって運命が奴を引き裂いたとしても、結局私のこの手が汚されなければいつまでも救われない、

5歳7歳12歳14歳17歳19歳20歳22歳、私の死体が頭の中で綺麗に並べられている。理不尽を振り上げられて殺された私たちはこの先なにがあっても生き返ることはない。コピーされた自分、何度も複製されて少しずつバグを添えられる自分を引き連れて、未来の私の姿を想像する。何番目の私までが存在しているんだろう。コピーにコピーを重ねた結果、私はどんな姿になるんだろう。そんなことを考えるとこの場から一歩も動きたくなくなる。弔われることもない過去の私たちは永遠に私の頭の奥で静かに横たわり続ける。

 

理不尽がわたしを雁字搦めにして離さない。結局はこれだったんだ。忘れられない理不尽たちが、何度引きちぎってもトカゲの尻尾のようにまた再生される。突然アクセル全開で突っ込んできた理不尽たちを一様に激しい業火で焼き尽くすことが出来たなら、どれほどの幸せを感じるだろうか。

 

心や身体が負けを認めてしまうけど頭がまだ諦めてない。こんな不条理を繰り返すのはもう嫌だ。いつか絶対に勝ちたい、圧倒的に勝ち誇って私の死体に綺麗な花を手向けなければ、あまりにも死んでいった私が可哀想だ。

 

 

 

炭火の消し方を君は知らない

 

知ってます?

水かけてもいいけど他の方法あるんだよ

 

ライブを観たあと空腹に耐えかねて渋谷のマックに初めて入った。絶対綺麗じゃないだろうなって思ってたからよっぽどのことがない限り入ろうなんて思わないのに、よっぽどがこんなにあっさり訪れるとは思わなかった。

2階の窓の外を臨む席でぼんやり人の往来を眺めつつ向かいの牛串屋さんの炭火をみてた。おじさんが炭の処理をしているところだった。あの消し方って一般的なのかな。確かに毎日使うのに水ぶっかけるのは実用的じゃないよね

 

渋谷のど真ん中にある名の知れたライブハウスで、半端なくカッコいい音楽がなされた瞬間に私は立ち会わせていたんですが

外はこのバンドの音楽のイントロすらも知らない人で溢れかえっているわけです、そんな人々に囲まれながら私たちは秘密の遊びに興じてるわけです、最高じゃないですか。ある種のテロリズムを感じてやっぱり私はこういうのが好きなんだと再確認した。ソールドアウトはしなかったあのライブを私は噛み締めたという幸せ、君はわかるかな

 

みんな気付いてるか、もう一生席替えのくじを引く時のドキドキは味わえないし、メールの返信を待ちかねてやるセンター問い合わせももう存在しない。生を重ねるということは何かを失い続けるということだ。得ることもあるけれど、圧倒的に喪失の方が多い。その証拠に日々、命の期限をひとつずつなくしているわけで

得られなくなる前に欲しがっておいた方がいい、逃す前に捕まえておいた方がいい。知らないより知っていた方がいい。その瞬間に後悔したとしても傷ついたとしても、私はやっぱり知りたいと思うことは知っておきたいと思うのです

 

渋谷のマックでシェイクを吸うパリピ風の男が「幸せがほしい」と大きな声で言っていて、私とこんなにも正反対の人でも最後に欲しがるものは同じなのだということに笑えた。たまたま操作ミスをしてイヤホンが黙り込んだ瞬間に飛び込んできた声だった。知ろうとも思わなかったことが目の前に降ってきて、その瞬間心がどう動くか、なんて今まで知らなかった。

 

私の欲しいもの、君は知っているかな

 

 

ひかり

 

10年前のきみの禍根は今でも美しくて、長い眠りから醒めた直後でもその圧倒的な煌めきが失われていないことに絶望した。

2018年が刻まれ始めたこの世界で、きみが焼きつけて煤だらけになった過去ですらも私を捕まえて離してくれないことに嫌気が差したからだった。どうしようもないきみが見つけ出した私も、どうしようもないのだ。

 

きみは本当にどうしようもなくて、救いようもなかった。だけど私の頭の上へと投げてくるきみの数秒前の思考はいつも私を驚かせたし楽しませてしまった。チカチカと色を変えるきみの目は憎たらしいほどに無邪気で、その指が弾いて散らした火花はなによりも綺麗だったから、私はもうなんだってよかった。

繁華街を歩きながら、大きな麻の香りに気がついてもなにも言わなかった。ふつうのひとはね、これがなんの香りかだなんてわからないんだよ。だから得意げな顔をするのはこの一瞬だけだからね。酩酊した学生を笑いながらネオンを駆けていく姿を後ろから眺めて、なんだか香港の映画みたいだと思った。小指に絡んだ細く白い煙があればどこまででも走っていけるような気がした。

 

君が両手では抱えきれずに、今にも破裂しそうだった風船がきみを飲み込んで真っ黒に染めてしまっても、私は白に塗り潰して煙をきつく結んでしまう。きみが闇から逃れようと足掻いて、雨に濡れ溺れて、手のひらを藁で切りながら迷子になったとしても、私は小指から狼煙を上げてしまうだろう。

新しい夜明けが追いついてくれるまで。

 

 

サレンダー

 

きみのからだから生えたそれから私の指紋がみつかったら、それはわたしがきみを染めたのだという証拠になるだろう。わかりやすく罪を被るのことがわたしの役目だ。どんなに眩しくとも、深い闇の中であろうともその使命だけはわたしの遺伝子に刻み込まれていていつだってその使命に意識をこじ開けられるのだ。煮えたぎった瞳で射られるのも、吹き出したきみを浴びるのも慣れてしまった。いつしかこの不快な感覚こそがわたしを生きていることへの証明とわたしのアイデンティティを呼び起こすものとなってしまった。

正解はわからない。わからないなんて言っておきながら、わからないという言葉を選んでしまうあたりにわたしの惨めな後悔の痕が滲む。わたしの望んだことはなんだろうか。この何度も何度も振り上げてきたわたしだけの武器と、わたしのドロドロの価値を手のひらで包み込んでもらうことだったような気がする。跳ね返るきみではなくて、染み渡るきみを頭の片隅で幾度となく繰り返しては、そんなぼやけた夢を生ぬるい現実が拭い去っていった。

試してみたかっただけでは。ザクザクでボロボロにしてしまってもなお、きみからの熱を渇望してしまっていたのかもしれない。花火が引き裂かれて夜空の中に散り散りに溶け込んでいく光景を思い出して、身震いをしつつも痛い愛の破片をまた握りしめて。

青い空に突き刺す光が脳に響いて瞼を持ち上げる