庇護雑記

嘘たち

エンドオブ

 

すごく気持ち悪くて、頭も軋むように痛くて途中で帰った。おやつの時間に自由の身になるなんて大学生以来で、なんとなく本を読みたくなって駅前の本屋で適当に短編集を買った。具合が悪いことをあまり認めたくなくて、隣の喫茶店に入る。いつものおじいさんがレジを打つ。何時に行ってもこのおじいさんがレジに立っている。一度深夜に訪れたことがあるけど、その時もこのおじいさんだった。何時間労働?

さっき適当に手に取った短編集の1作目の登場人物が、自分と同じ苗字である偶然に驚いた。比較的珍しい自分の苗字を目にするとドキリとする。突然降ってきた、映画やドラマでありそうなシチュエーションに思わず顔をあげレジのおじいさんの顔を確認する。穏やかな表情でコーヒーを淹れていた。

短編なのですぐに読み終わる。私と同じ苗字の奴は、幽霊であったというオチだった。幽霊って。少なくともいまの私に突きつけるファンタジーじゃないだろ。ここでもバッドエンドの主人公に引っ張り出される自分に笑う。物語の中ですら救われないという事実に吐き気がまた込み上げてきて店を出た。店の前には遮断機と、その向こうを猛スピードで走る特急列車、ドラッグストア、スーパー。引き寄せられるように遮断機の横に立ちぼんやりと列車を眺める。警告音がイヤホンの音楽をかき消して現実に引き戻す。夢みたいな現実で目の前が歪む。あたまいたい

 

いつでも死ねるな、と思ったら悔しくて泣きそうになった。スーパーで夜ご飯を買って小銭を減らした。脈が乱れているのはもう慣れたけど、乱れるぐらいならもう諦めてほしいんだよ、私は。ご飯の入った袋を手に提げて歩く。リサイクル待ちのペットボトルたちが緑の網の中にいるのが目に入って、なんとなくその塊を蹴飛ばした。中身が飛ばないように無意識のうちに力加減をしていた自分がつまらなかった。後ろを振り返ったけども、誰もいなかった。せめて誰か見ていたらよかったのに。誰も見てない悪事なんて、本当にただの悪事になってしまうじゃないの。

 

結局ずっとこうだ。色んなことから色が消えていくのがわかる。おなかがすく、とかもよく分からなくなってきた。傷の痛みと不調だけがはっきりと自分に訴えてくるの腹が立つな。

自分だけのものにしておくのは苦しくて、小さく爆弾を仕掛ける。ねむたい