庇護雑記

嘘たち

炭火の消し方を君は知らない

 

知ってます?

水かけてもいいけど他の方法あるんだよ

 

ライブを観たあと空腹に耐えかねて渋谷のマックに初めて入った。絶対綺麗じゃないだろうなって思ってたからよっぽどのことがない限り入ろうなんて思わないのに、よっぽどがこんなにあっさり訪れるとは思わなかった。

2階の窓の外を臨む席でぼんやり人の往来を眺めつつ向かいの牛串屋さんの炭火をみてた。おじさんが炭の処理をしているところだった。あの消し方って一般的なのかな。確かに毎日使うのに水ぶっかけるのは実用的じゃないよね

 

渋谷のど真ん中にある名の知れたライブハウスで、半端なくカッコいい音楽がなされた瞬間に私は立ち会わせていたんですが

外はこのバンドの音楽のイントロすらも知らない人で溢れかえっているわけです、そんな人々に囲まれながら私たちは秘密の遊びに興じてるわけです、最高じゃないですか。ある種のテロリズムを感じてやっぱり私はこういうのが好きなんだと再確認した。ソールドアウトはしなかったあのライブを私は噛み締めたという幸せ、君はわかるかな

 

みんな気付いてるか、もう一生席替えのくじを引く時のドキドキは味わえないし、メールの返信を待ちかねてやるセンター問い合わせももう存在しない。生を重ねるということは何かを失い続けるということだ。得ることもあるけれど、圧倒的に喪失の方が多い。その証拠に日々、命の期限をひとつずつなくしているわけで

得られなくなる前に欲しがっておいた方がいい、逃す前に捕まえておいた方がいい。知らないより知っていた方がいい。その瞬間に後悔したとしても傷ついたとしても、私はやっぱり知りたいと思うことは知っておきたいと思うのです

 

渋谷のマックでシェイクを吸うパリピ風の男が「幸せがほしい」と大きな声で言っていて、私とこんなにも正反対の人でも最後に欲しがるものは同じなのだということに笑えた。たまたま操作ミスをしてイヤホンが黙り込んだ瞬間に飛び込んできた声だった。知ろうとも思わなかったことが目の前に降ってきて、その瞬間心がどう動くか、なんて今まで知らなかった。

 

私の欲しいもの、君は知っているかな