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庇護雑記

フィクションだから。

初恋

 

 

彼のちぎれた腹から吹き出した血を受け止めた時、私は確かに彼の熱を感じました。私を優しく抱きかかえるかのように、頭のてっぺんから肩へ胸へとねっとりとした執着を浴びました。唇を割って染み入る赤い熱は、非常に甘くいつまでも味わっていられるように思えました。

車輪が動き、彼の身体の中にぴったりと収まっていた中身がボロボロと零れ落ちていきました。それは美しい彼の顔からは到底想像できないほど醜く不気味な塊でした。こんなに美しい人の中に、こんなにも生々しくおどろおどろしいものが入っていたことには驚きましたが、それらが彼を内側から支えていたものだと考えると、その残骸すらも道端に凛と咲くタンポポや、町の小学生がまいにちお水をあげてやっと咲かせたチューリップのように、愛らしく気高いものに見えました。彼が隠し持っていた美しい残骸を守らなければ、そんな考えが瞬時に頭をよぎり、私は自分の服を伸ばして彼をかき集めました。彼のためなら、私はなんだって出来たのです。

目眩に襲われ吐き気を催しつつもなんとか彼の顔の前までたどり着くと、その顔は真っ赤に染まってはいたものの、表情をつくる筋肉は弛緩しきっており、何の苦しみも感じなかったかのように穏やかな表情を浮かべていました。愛してる、と何度も言ってくれた、だらんと下がった彼の舌を口の中にしまい上下の唇をしっかりと合わせました。そのあたりから、周りの音がより一層騒がしくなったような気がしますが、そこからの記憶は途絶えています。

 

 

最後に浴びた愛する彼のすべては、私にとって永遠に忘れられない感覚なのです。ほんの少しでも彼の存在を感じたくて、自らの腕を噛んだりもしますが、ただひたすらに鉄の味しかしません。あの時感じた甘味は、一体なんだったのでしょう。彼の一滴が私の中にまだ残っていると信じて、私は腕を噛み続けているのです。すべては、彼をまた感じるためです。

 

 

 

記録

 

 

別に深い意味なんてなかったわ。

灰色の分厚い雲が脳内に垂れこめてくると急な雨に備えて傘を探したり、屋根のあるところまで走ってみたり、そんな感じで、誰だって雨をしのぐでしょう。ずぶ濡れになるなんて嫌じゃない。あなたもそうでしょう?

それと同じです。私は雨に打たれないように傘をさして建物の陰に隠れた。別になんでもよかった。誰でも良かったのよ。それで自分が風邪をひかなくて済むのなら。

アルコールで酩酊してずいぶんと楽しそうなあなたも結局私と似たようなものね。目的は現実逃避、目標はゼロ地点。なんにもないって分かっているけど走り続けるのは果たして本当に不幸なのかしら。希望を見据えて山道を走った挙句の崖よりは、よっぽどマシだと思うわ。もし惰性で生きていくことが出来るとするならば、それが一番の幸せ者ね。だけどそんな無味乾燥な幸せなんていらないわ。

自分を満たすためならどんな出費も犠牲も厭わない。飽きたらまた売りに投げればいいのだし、踏み潰された愛だってどうせ使い捨てなのだからまた新しいものを作ればいいわ。そうやって自分の中でサイクルを作るの。賢いと思わない?私はひとりで、欲しいものをなんだって手に入れてるのよ。

 

上からこうやって見下ろしてると、全てを手に入れている気分になるの。それと同時に全て失くした気分にもなるわ。手に入れるということは、失うというリスクも伴うのだから当然のことよね。失うということはどれほど怖いのかしら。どれほど憐れな目を向けられるのかしら。それはね、まず得てみないとわからないものなのよ。

 

私は別に失くしてなんかないわ。それなのに何故そんなに哀しそうな目で見るのかしら。私はきちんと傘をさしてるのに。私は綺麗に着飾って大好きなもので五感を覆い尽くしているというのに。幻想?そうね、幻想に浸って戻ってこれなくなってみたいものね。

 

 

朝よ。早起きね。

 

 

吐きたくなるほど愛されたい

 

 

フラワーカンパニーズの吐きたくなるほど愛されたいが、飛び降りの曲だと気付いたのはガラガラの快速電車に揺られている時だった。スカイダイビング、地面につくまであと何秒、涙なんて流せない、最後加速していくドラムとギターの旋律、なにより鈴木圭介の歌声に鳥肌が立った。公共の場で冷水をぶっかけられたような顔しちゃってスマホを握りしめてる私の向かいでは、ネクタイもメガネも歪んで体も半分傾いてるサラリーマンが夢の世界に旅立ってた。揺さぶって現実に戻して、今あなたは幸せですかと聞きたかった。幸せですか、あなた。てかあなたの幸せってなんですか?私のイヤホンから流れるこの曲を聴いてなにを思います?根性ねえな、とか痛えな、とかそんな感じですかね。それとも私と一緒に冷水ぶっかけられた顔します?心臓に近い心臓じゃないところを鷲掴みにされるような気持ちになったり、するんですかね。目の奥がツーンとしたり、するんですかね。

私があなたの後ろに流れる景色を見ている間、あなたは私の後ろに流れる景色を見ている。決して重ならない視覚情報みたいに、この曲が誰かの手にひっかかったり、あるいはすり抜けて流れて行ったりしながら、時間だけは平等に流れてる。あなたは直帰ですか、わたしは、これから旧友に会うんです。

 

 

旧友と食事に行った。久しぶりだった。

私の大嫌いな中学時代を知るこの旧友はとてもじゃないけど24時間では足りないくらいの活動をしていて、時間は平等なんて言ったけどそれは与えられたものであって何%を活用するかは全く別の話だと気付いた。しかし、倍速で生きているとしか思えない彼女の話を聞いているとだんだん自分が太陽に背を向けている人間のように思えて後ろめたい気分になった。あたし、なにしてんだろ。てかなにやりたいんだろ。ほんとにやりたいのかなこれ、才能あんのかな、とか。

中学時代の記憶の掘り返しは大嫌いだが、彼女が当時の秘密を零した。以下仮名。

「ミナとアリサってニコイチだったじゃん、でもアリサってミナのことすっげー嫌ってたんだよ。だからあのふたり、高校進学してから全く交流してないでしょ。縁切ったんだよ、アリサ。」

 

だいぶびっくりした。女って最低だと久々に思った。最低で汚くて愚かだ。私あの2人はほんとに仲良いと思ってた。ミナはアリサのこと本当に好きだったはずだ。でもアリサは違ったんだ。大っ嫌いだったんだ。また私は冷水ぶっかけられたみたいな顔してたと思う。そんなに大嫌いな相手に対してニコイチみたいな笑顔はできない。でもアリサはずっと笑ってた。何年も会っていないアリサの笑顔を思い出して寒気がした。

 

帰り道、安っぽいネオンに照らされた道を歩きながら旧友が言った言葉、それは真理であった気がするけど、私はそんなに器用に生きられない。だからこんがらがっちゃってる、なんて言えるわけもなく笑ってバイバイした。なに、笑ってんだよ私。器用に笑顔、作ってんじゃねえよ。情けなくて堪らなかった。涙なんて流せないくらいに。

 

私をはけ口とするLINEをスクショして友人に送るたび、一瞬思う。

嘘じゃない、嫌いなんかじゃない、でもただサンドバッグのように、首の動くマネキンのように、時にはダッチワイフのように、そんなふうに自分が扱われてるような気がして。別に誰でも良くて。話聞いてくれるなら誰でも良くての誰でもがたまたま私だっただけ、なんて考えると送信ボタンを押してしまうのだ。

私って最低だ。

 

 

 

幸福論17

 

 

やっぱり悲しくてたまんないんだなぁ

失うことが何よりも怖いくせに守るということが下手すぎる矛盾のせいで永遠に苦しんでる。本当の幸せというのは失うことを恐れないということだ、って聞いたことあるけどその通りですねって感じだよ。恐れるものが何もないってどういう状況まで行けばいいんだ。上か下を極限まで極めた人しか当てはまらないんじゃないか。じゃあ世間一般含め私含め世の中のメンタルヘルス壊れ勢の幸せとはなんだ。たぶんない。幸せとかいうのはすべて幻想でいつか必ず現実によって強制的に目を覚まさせられてしまうんだろう。じゃあ幸せなんてはじめから求めなければいいんじゃないか。

なにも求めずなにも期待せずなにも持たず、だ。

 

 

こんなんじゃなんのために生きてんだか

 

 

今の私には恐れしかない。

周りの人間やら未来やら自分も能力も才能も感情も夢も希望も現実も

 

 

 

 

球体について

 

 

ずっと隠していたことをバラしてしまった

本物の私を見たかはわからないけど、まあたぶん確認しただろう、と思う。すべての人が受け入れてくれるなんて思ってない。怖がって逃げていく人がいたとしても引き止めない。引き止める資格なんてないから。

でもやっぱり知られたくなかった。今知っている人は何人だっけ。6?わかんないや、気付いてても何も言わないでいてくれる人もいるし。そもそも隠しきれるわけがないんですけれども

 

 

一定の条件が当てはまると感情のコントロールが効かなくなる。プツンと切れたら私ではなくなる。そんな自分にはうんざりだけどそれでもどうしようもないからロラゼパムでなんとか抑えようとしてまた浸っていってしまう。一生このままかもしれない。別にそれでいいと思う。ずっとずっとこんな小さな弾をかじり続けてそれで私が正常な人間としての演技をしていけるのなら私はそれで構わない。

いつか耐性がついて、追いつかなくなって、人格を手放してしまった時がきたらわたしは自ら命を絶つだろう。本意じゃないだろうけど、結果としてはそうなるんだろう。その時受ける罰は正常な人間が命を投げ出した代償と同じなのだろうか、少しくらい、許してもらえないだろうか。

 

 

 

 

つらい、しんどい

好きなバンドのライブがたくさんあるから生きる気力に出来ると思ってたけどだめだった、これでだめなら私はもう何をもってしてもダメだ。苦情が来るんじゃないかってくらい大きな音で孤独を埋めてもすきま風が突き刺さって切り傷が増えていくばかりだ。死にたいし、死んで後悔させたいとも思ってる、後悔させてやるために命すら手放せるであろう私は何のために生まれたんだろう。おかあさんごめんね。おとうさんごめんね。私がボロボロになる代わりにふたりが長生きできればいいなぁ。それぞれ、もう交わらない世界で生きているけども。私がいなくなって、そんな奇跡で再びクロスしたら素敵だなと思ったりする。私は鎹だから。鎹のなりそこないだけど今度こそはうまくなれるかな。

 

 

出来ることなら幸せな姿を見せたかった。同じ空間にふたりがいて、真っ白な私がいて真っ暗な闇を跳ね返すくらいに眩しい真っ白に包まれた私をみてほしかった。夢物語。ぜんぶ叶わない夢。現実は血の気の引いた青白い私と溶けた眼球、人工的な赤を唇にさして、そんな真っ白な私がみえる。

 

幸せになりたかった

心の底から笑いたかった

笑って、って言って明るく笑える子がずっとずっと羨ましかった。私はいつも口を結んで強ばる顔をなんとかすまし顔まで持ってく。それだけで精一杯だった。

ああ涙出てきた。なんでうまく生きられなかったんだろう。普通に、普通に生きていきたかっただけなのに。どうしてぜんぶ壊れていってしまったんだろう。差し伸べてくれる手だってあるのに、うまく掴めなくて、いや掴み方がわからなくていつも手を滑らせて私が落ちていく。ごめんね。

 

 

3500

 

 

すごく幸せだったのに、やっぱりだめだった

半月くらいやめられてたのにまた手首を切って振り出しに戻った。切れ味悪いから浅く9本切った。もうだめだ本当に。つらい。未来に期待をするのはやめだ。完全にやめだ。バカバカしい、もうどうでもいい、こんな人生、まっぴらだ。早くめちゃくちゃになりたい、バラバラに壊れて脳とか飛び出して死にたい。無惨な姿で死にたい。ぐっちゃぐちゃに、

 

どうせ死ぬなら荒稼ぎしてみてから死ぬかな、それも全然ありかもしれない